このところ職場で
「定年後の趣味に迷ったらあいつに相談」というような
妙なトレンドができてしまったようで
おごりの一杯を持参して
(コンビニコーヒー1杯である、念のため)
クライアントが千客万来の日々だが
正直、この人が来るとは思わなかった
ちょっと、ゴツいタイプで大学も体育会
いささかモラハラ気質がなくはなく
私とは、あまり親しいというわけでも無い
とはいえ
コンプライアンスが大切にされるようになってからは
モラハラ発言も、男尊女卑な行動も
人が変わったように、ピタリと止めて数年たつ
その点は、見事だと思っている
私より、少し年下で、確か役職定年もまだだったはずだ
正直に、意外ですね、といってみたところ
お嬢さんから、お父さんは根本的に変わらなくては
ダメだ、と言われたのだそうだ
お恥ずかしい話ですが、と前置きして
何がダメなんだ、と聞き返したら
娘は返事をしなかったので
ひょっとして、自分は何か
トンデモナイ間違いをやりかけているのではないかと
心配になって、とのことだった
これは、困った
おそらく、相談したいのは趣味のことではなく
家庭人として、どう生きていけばいいか
という点なのだろう
さすがに、これは私の手にあまる
なので
夫婦のことは、わかりませんよ
特に、私はシングルなので、と逃げようとして
気が変わった
的外れかもしれませんが、と前置きして
おすすめの趣味としては、と言葉を続けた
娘さんが根本的に変わらなくてはダメ、ということは
おそらく、家族からは不合格、と
思われているのだろう
確かに、モラハラ気味のところはあった
男尊女卑が目に余ることも、無くはなかった
だが、数年前
職場ぐるみで、これは止めましょう、と決めてからは
四の五の言わず、ピタリとやめて数年間
それを守り続けるだけの、潔さと強さのある人だ
こうなると、親しい人かどうかとは、全く別の次元で
拍手の一つもしたくなるというものではないか
ご家族ときちんと向き合い
話をするチャンスを作れれば
ひょっとして、悲劇的な事態も
咲けられるのではないか、と
妙なおせっかいが、頭をもたげてきたからだ
私がすすめたのは
「男の料理」
ただ、普通に料理をするだけではなく
レシピ本の検証をして、動画にとる
あわよくば、ユーチューバーデビューを狙う
いわば「合わせ技」
料理ねぇ、と納得しかねていたので
少し、解説を続けた
今は、書店に行くと
短時間でサッとできる料理のレシピ本が並んでいる
例えば
「やる気1パーセント」シリーズや
「クックパッドの高評価」シリーズ
「ずぼら飯」シリーズ
「リュウジ式至高のレシピシリーズ」
「男飯入門」などなど
余りにも多くて、選べないくらいだ
それを、実際に作ってみてくれて
本当においしいのか、難しいところはなかったか
初心者の目で評価してくれる「検証動画」があれば
必ず、需要はあるだろう
特に、1人暮らしになったシニア男性や
単身赴任中の現役サラリーマン
新生活を始めるようになった大学生や新入社員など
喜んで見たがる人は多いと思う
しかも、料理ユーチューバーとして
上手く行けば、将来の収入につながるかもしれない
収入まで行かないにしても
仕事をやめても、新しい人とつながっていくことができる
ひょっとしたら、自分で新しいメニューも
思いつくかもしれない
未来がどんどん広がる感じがするではないか
そのうえ、料理を作れば
その日の食事が出来上がるのだから
おそらく、ご家庭でも喜ばれるのではないか
特に、毎日の料理が負担になっているシニア女性は多いから
土・日の昼は毎週自分が作りたい、と話せば
けっこう、協力してもらえるかもしれない
これはオマケだが
ある程度、美味しいものが作れるようになったら
お嬢さんに
根本的に変わったと思うが、どうか、と
尋ねてみるのも、いいと思う
コトバに出して言ったのはここまでだが
私としては、内心一番気になっているのは
最後の点だったりする
母親と娘の絆はかなり強いことが多い
娘が父親に、変わった方がいい、という時は
たいてい、母親が娘に、父親への不満を話し
娘が、それに共感している時だろう
これは、相当の危険信号だ
娘さんの反応を見れば、ある程度、奥さんの気持ちもわかるだろう
毎週の料理で
少しでも、事態が良くなってくれるといいと思う
ここまで話して、どうやら納得してもらえたようだった
「男飯入門」は面白そうだ
試しに、一丁やってみるか、
でも、包丁を使ったことが無くて
とのことだったので
レシピの中から、包丁を使わず
スライサーや、手でちぎるようなものを選んで
作ってみてはどうですか、と
おススメした
例えば、サラダでも
キャベツの千切りはスライサーでできるし
レタスなら、手でちぎるだけだ
簡単にしようと思えば、いくらでもできる
ダメ押しに、つまらなかったら
もう一度相談に来てくれれば
ほかのネタも探しますよ
まずは、スタートを、と
応援しておいた
そして最後のアドバイスとして
「皿洗いと片付けまでが料理」
「片づけ方は奥さんに聞くこと」
「美味しくできても、自慢しないこと」
「今まで料理を作り続けてくれてありがとう
ということ」をつけ加えておいた
最初は、料理にありがとう、はおかしい
家を維持するための仕事は自分がして
収入を家庭に入れてきた
家事をするのは、奥さんの当然の職務だから
礼を言うのは筋が違う、といっていたが
それなら、退職する人に花束を渡し
今までありがとうございました、というのも
おかしいではないか
給料もボーナスもきっちりもらい
退職金までせしめていくのだから
その理屈なら、勝手に出て行け、ということになる
それが、そうはならない
花束、拍手、感謝の言葉は退職とセットになっている
それと同じだ
週末だけでも、料理から退職するのだから
少なくとも、お礼の言葉は必要だろう、と話した
しばらくは、考え込んでいたが
なるほど、腑に落ちた、というと
これは、女房に花束も用意した方がいいかな、と言われた
確かに、退職者と花束はセットだが
花束は家に花瓶があるかどうか
花瓶の大きさがどのくらいかにもよるので
二千円くらいで
アレンジメントを作ってもらう方がいいと
おススメしたが
この分なら、何とかうまくいきそうな気がしてきた
頑張れ!!
ちなみに、花のアレンジメントは
これで3000円くらいだ
プレゼントには、結構おすすめかもしれない