今から、明日が楽しみでたまらない
というのも
ウクライナのバレエ団の来日が決定
チケット発売が、明日からだからだ
こんな戦争中なのに、バレエ団が
わざわざ日本まで来られるのか、と
聞かれそうではあるが
ウクライナ国立バレエ団は
侵攻を受けて間もないころから
合計で、四回ほど来日公演を行っている
今回の公演は、年明けの1月なのだが
今までにはなかった
スペシャルメンバーの参加がある
私が買いたいのは、このチケットなのだが
おそらく、発売直後にものすごい争奪戦になるだろう
というのも
演目が「ジゼル」
タイトルロールのジゼル役は、アリーナ・コジョカル
相手役のアルブレヒト役は、アレクサンドル・トル―シュという
世界トップと言っていいほどのコンビだからだ
この二人が踊るのは
1月5日の一公演のみ
争奪戦は、確実だ
バレエマニアでない方には
何がなんだか、さっぱりわからないと思うので
少しウンチクを垂れ流すと
ウクライナ国立バレエ団は
元は「キエフバレエ」という名で
ソビエト三大バレエ団の一つ
その中でも、最もアカデミックで、優雅
繊細な表現を得意としているバレエ団だ
今回の戦争をきっかけに
「ウクライナ国立バレエ団」と名前を改めた
バレエ団の芸術監督は日本人
京都出身の方だ
この方が、バラバラになりかけたバレエ団をまとめ
「踊ること、文化の火を絶やさないことが
我々の戦いだ」と
日本のバレエ界からの強い後押しも受けて
二年前の夏、戦争が始まってから5カ月後に
日本公演を行い、大成功を収めた
ただ、このバレエ団では
ロシアのプロバガンダに使われている
チャイコフスキーのバレエは、上演しない
いわゆる「三大バレエ」は封印しているが
バレエ作品には、ほかにもフランス系のものに
かなりの名作が多い
その、フランス系の名作中の名作が、「ジゼル」だ
ざっと、あらすじを紹介すると
「ジゼル」というのは、素朴な村娘の名前だ
この、ジゼルは村で一番の踊りの名手だが
生まれつき心臓が弱く
はかなげで、透明感のある少女である
恋人はいることはいるが
これが、平民に変装している
土地の領主で、貴族の婚約者がいるという状況
ジゼルは婚約者とはちあわせしてしまい
恋人に裏切られていることを知ると
ショックのあまり、心臓がもたず
錯乱の果てに死んでしまう
ここまでが、一幕だ
若くして死んだ女性は
死後、ウイリーという化け物に転生し
日が沈んだ後に、墓地にいる若い男にとりつき
化け物の群れで取り囲み
死ぬまで躍らせ、踊り殺す
ジゼルもウイリーに転生するのだが
自分を弔いに来たアルブレヒトを
殺すにしのびず
仲間のウイリーたちから守り抜き
夜明けの鐘の音とともに
アルブレヒトと最後の別れを交わして、消えていく
という、正直に言って
面白いのか、面白くないのか
よくわからないストーリーなのだが
この作品は、役の解釈の幅が大きい
まず、ジゼルをダマすアルブレヒトだが
ダンサーによって
深く物事を考えず、ただ単に
カワイイ女の子と楽しく遊んでいる
プレイボーイタイプ
どうせ平民じゃないか、と
明らかに小ばかにした態度で
イヤな野郎なのだが、どうにも抗いがたく魅力的
オマケに、自分でそれを知っているから
始末が悪いと、という
歌舞伎でいえば「色悪」タイプ
身分違いを分かっていながら
どうしてもあきらめられない
純愛タイプ、と
簡単に分けても三種類ある
その日踊るダンサーが、どのタイプか
幕が上がるまでの、お楽しみだ
そして
同じ曲、同じ振り付けなのに
ダンサーがどの解釈をとるかで
作品の印象が全く異なってくるのが
バレエの面白いところでもある
主役のジゼルに至っては、バレリーナ一人ずつ
全然違うタイプになっている
私が一番好きなタイプは
透明感があって、どこまでも可憐で
小動物のような愛らしさがあって
暖かく、静謐で、思慮深いタイプ
大人になったら
ピエタの聖母マリアのようになりそうなタイプ
そんなタイプのダンサーがいるのか、と
言われそうだが
それが、いるのだ
それが、アリーナ・コジョカル
来年の1月5日に「ジゼル」を
踊ることになっているバレリーナである
コジョカルのジゼルは、私の理想のジゼルで
こと「ジゼル」に関しては
20世紀最高のバレリーナと呼ばれた
シルヴィ・ギエムより、コジョカルの方が上だと思っている
コジョカルは、160㎝も無いのだが
その、身長の低さが
かえって、守ってあげたくなるような
可憐さを醸し出している
それでいて、テクニックは完璧に近く
風でも起こしそうなスピードて
正確で鮮やかな足さばき、明快なステップ
残像に残るような美しいラインを
次々と繰り出して、バレエを見る喜び、というものを
体感させてくれる
正直、コジョカルがウクライナバレエ団に
客演してくれるとは思わなかった
というのも、コジョカルは
昔、このバレエ団のプリマだったからだ
ところが、「伝統というと聞こえはいいけれど
同じことの繰り返しばかり」と
タンカをきって退団
イギリスのバレエ団の試験を受けて
何と、コールドで入団
……コールド、というのは
早く言うと、その他大勢で踊る
ダンサーのことだ
例えば、「白鳥の湖」なら
オデット姫のバックで踊っている
白鳥ズのようなダンサーを言う……
こうした、因縁があるからだ
にもかかわらず、今回の公演で
客演を務めてくれるのは
この公演の「ジゼル」が新演出であることに加えて
ウクライナバレエ団への
強い支援の気持ちなのだろうと思う
ちなみに、アルブレヒト役の
アレクサンドル・トルーシュは
日本では、あまり知られていないが
私のイチオシの男性バレエダンサーだ
この人が知られていないのは
単純に、日本での公演が少ないことと
諸族が、ハンブルグ・バレエ団という
素人受けのしないバレエ団だからだろう
この、バレエ団は
ノイマイヤーという、天才振付家がおり
「人の情念」を踊らせると
これを超えるバレエ団は、世界中に存在しないと思う
なので
死を超えて続く愛をテーマにする
「ジゼル」には
ハンブルグ・バレエ団の
アレクサンドル・トルーシュは
まさにはまり役だろうと思う
ちなみに
この、「ジゼル」は新演出で
細かい部分は無数に
そして、一番大きな点では
ラストが大改革されている
従来のジゼルは、夜明けの鐘が鳴って
生き残ったアルブレヒトと
化け物のジゼルは永遠の別れ、なのだが
この、新作ではどうなっている
これは、あえてネタバレせずにおこうと思う
だが
初演を見たとき
「なぜ、このラストが思いつかなかったのだろう」と
疑問に思うほど
何もかもが、腑に落ちるラストだった
そして
今現在も、ロシアの空襲を受け
戦闘で命を失うウクライナで
「生死を超える愛」をテーマにする「ジゼル」を
上演するには
このラストしかないだろう、と
深く納得した
1月5日のチケット
何としても、手に入れたい
どうぞ、幸運を祈っていただきたい
そして、もし
ちょっとでも興味を引かれた方がおられたら
劇場に足を運んでいただければ幸いだが
チケットは、私の狙っている一番安い席でも
7000円する
それはちょっと、と思う方がおられたら
下に、ウクライナ国立バレエが
昨年、世界初演を行った時の
動画を貼っておく
私の「推し」のダンサーではないので
少し物足りないところもあり
また、世界初演ということで
まだ熟しきっていない、硬さはあるが
十分に、見ごたえがある
しかも全幕分だ
ご覧になったら、もしできることなら
見学料(?)代わりに
バレエ団の日本人の芸術監督
寺田氏の主催する
バレエ団の練習用のトウシューズを買うための
「トウシューズ基金」
一口1000円に、ご協力いただけると
望外の喜びでもある
アドレスは、下に貼ってある通りだ
ウクライナ国立バレエ「トウシューズ基金」(1口¥1,000) | Koransha Offic... (stores.jp)
下にあるのが、動画だ
期間限定なので、お早めにどうぞ