以前、職場の昼休みに
やっとなんとか、というよりも
完全に、運が良かったおかげで
ファイナンシャルプランナー1級に合格できた
これで、定年後の再就職は一安心、と話していたときに
若い同僚に、これからどうします?と聞かれた
私はもちろん、スペイン語の検定を受けたい
できれは、定年で完全に退職する前に
ビジネスレベルくらいまで
仕上げられるといいとは思っているが
時間的に、少し無理かな、と話したところ
試験の後に、また試験ですか
すごくキツくありませんか
なんだか、無間地獄みたいで、と言われた
確かに、試験に受かったら、また次の試験、と言われれば
無間地獄めいてはいるのだが
私に言わせれば、やっている内容が違う
ファイナンシャルプランナーの時は
金融の知識や、相続税の計算をしていた
毎日、電卓をたたいて、
法人税の申請書のひな型のような
解答用紙に数字を埋めていた
興味のあるものは、面白かったが
どちらかといえば、まったく関心の持てない分野の方が多く
なかなかつらいものはあった
だが
今やっている、スペイン語は
趣味の要素の方が大きい
つまり
たとえて言うならば
映画「釣りバカ日誌」の浜ちゃんに
釣り針の手入れのような、細かい仕事をしていて
つらくはないですか、と聞くようなもので
好きなことをしているのだから
ストレスには、なりようがない
それに
60歳からの勉強なので
真面目にはやっていない
と言っても、不真面目、というわけではない
いわば「非真面目」勉強法をやっている
と答えると
ぽかんとした顔をされたので
少し、説明を続けた
学校で習うような勉強は、真面目な勉強で
確かに、基礎文法や、単語暗記などは
真面目にやった方が身に付きやすい
ただ、私はこのジャンルも
市販の文法書ではなく
NHKラジオの講座を使っている
NHKはお堅いとはいえ
テキストを売らなくてはいけない、という
大人の事情もあるため
講座の内容は、実に凝っていて
面白い内容が多い
実際、現在放送中のラジオ講座は
日本人の主人公、エミが
スペインの歴史上の人物たちと出会う旅をする、という
内容になっていて
先月は、画家のベラスケスや、ピカソ
モデルになった、マルガリータ王女とのダイアログ
今月は、コロンブスに航海に誘われる、という
日本語できいただけでも、楽しそうな
テキストになっている
毎日30分のリスニングと、音読練習は
もっと楽しい
リスニングも、真面目な勉強なら
スペイン語で、ニュースあたりを聞くのだろうが
私は、アニメを見ている
日本でも、大人気の「SPY×FAMILY」
スペイン語版を、ネットで無料で見ることができる
私はこのコミックが大好きで
日本語でのアニメも見ているため
スペイン語は2割程度しかわからないが
内容は、大体つかめる
仕事から帰ってきて、夕食を済ませ
コーヒーを飲みながら、スペイン語版を見るのは
毎日の楽しみの一つだ
音読練習も
真面目な勉強なら
NHKのテキストを音読するのだろうが
私は、好きなアルゼンチン・タンゴの歌詞を
何度か素読し、
飽きてきたら、歌手の歌をかけて
一緒に歌っている
まだまだ、舌が回らず
一行飛ばしになったりしているのだが
好きな曲を、好きな歌手に合わせて歌っているのだ
つらいどころか、むしろ、楽しくてたまらない
何年もかけて、努力してきた試験に合格すると
虚脱状態になって
ひどい場合は、うつ病まで行くこともあるそうだが
私は、むしろ
今までずっと、ガマンしてきた趣味が
思いっきり楽しめる
無間地獄、というよりも、むしろ、無限極楽、という感じだ
この頃は、ネットが発達しているので
教材には困らない
本当に、いい時代になったものだと
しみじみ、ありがたく感じている
ちなみに
私が毎日歌詞を音読して
歌えるようになりたいと
汗を流して(?)いるのは、この曲
Por una cabeza
実は、競馬用語で「首の差一つ」という意味だ
もう少しで、手に入れられそうだった恋人を
まさに、「首の差一つ」で
失った男性の歌
破れた恋を競馬のレースに重ねて歌う
センスのいい、大人な歌詞で
アルゼンチン・タンゴにしては
けっこう、甘めの曲だと思う
歌っているのは、作曲者の
カルロス・ガルデル自身
この歌手は、私のお気に入りだ
生まれた場所も、正確な年齢すらも不明、という
なんとも神秘的な、歌手兼俳優なのだが
亡くなったのがなんと、1935年
第二次世界大戦の始まる、6年も前だ
(ちなみに、人気の絶頂期、飛行機事故であった)
それが、21世紀の日本にいながら
オリジナルの音源で、いつでも聞ける
本当にいい時代になったものだと思う
カルロス・ガルデルの歌う
Por una cabeza の動画を下に貼ってみた
切なく、甘く
ちょいワルなのに、ロマンチストで
なんとも言えぬ、伊達男ぶりだ
興味のある方も、ない方も、ぜひ一度聞いてみてほしい
絶対に、損はない……と思う