2024年7月27日土曜日

パリオリンピック開会式・こういうのが見たかった

 私はスポーツには、あまり興味はない

オリンピックといわれても

正直、興味のないスポーツ中継が

テレビを占領するだけの話で

退屈なだけなのだが


開会式と、閉会式だけは、ちょっと楽しみだ

もともと、ダンスや絵が好きなので

国家が威信をかけたショー、となると

これは面白そう、とワクワクしてくる

その国のトップ演出家がプランを練り

その国の一番の「自慢」をふんだんに見せる、というのだから

たたでさえ楽しみなうえに

今回の開催都市は、パリだ

芸術の都、花の都が何を表現しようとしてくるのか

聖火台はどんなスタイルで、聖火はどうつけるのか

競技よりも、ずっと興味を持っていた


夜の1時からの放送は、さすがに見られないので

翌日、つまり、今日の昼からの再放送を

ゆっくりと見ることにした


いや、実に楽しかった

これほどの物を見せてくれるとは、想像もしなかった

さすが、としか言いようがない


今までの開会式では選手はスタジアム裏で待機

その間に、歌や踊りのパフォーマンスが繰り広げられるのだが

今回は、選手はセーヌ川を6キロの川下り

その先頭のギリシャ選手団が進んでいくにつれ

12の小さなショー、オリンピック委員会の言葉を借りれば「タブロー」が

行われていく


「スポーツマンシップ」のタブローでは

大道芸のような人が、大縄跳びや手具無しの新体操のような動き

これだけでもずっと見ていたいような

豪華なショーで、私はとても気に入ったのだが


圧巻は「liberte」自由、の章だった

マリー・アントワネットがフランス革命で捕えられ

処刑まで幽閉されていたコンシェルジュりの前を通ると

最初は、ミュージカル「レ・ミゼラブル」の一場面

それを、19世紀の画家、ドラクロワの描いた

「民衆を率いる自由の女神」を思わせる形にアレンジして見せる

そして、次は場面を切りかえ

コンシェルジュリの窓の奥にたたずむ

赤いドレスの女性が

切り落とされた自分の生首を抱えて

フランス革命当時の歌を一節歌うと

その続きを、メタルバンドがロックで演奏する

コンシェルジュリの中には、この女性が

窓ごとに1人ずつ立っており

曲が終わると、血しぶきを思わせる

赤いテープが大量に投げられ

赤い煙に覆われる









お見事、と思った

フランスの歴史は、確かにこうだと思ったからだ

「レ・ミゼラブル」はフランス革命の話ではなく

それから100年以上後の話で

「レ・ミゼラブル」で登場する革命は、歴史用語で言えば

「パリ・コミューン」

学生や若者を中心に起きた、世界初の共産主義革命だったが

たった一晩で、無残に失敗し

首謀者はもちろん、単なる参加者まで徹底的に弾圧され

同じフランス人に殺しつくされている

この、「皆殺し」は

ミュージカル「レ・ミゼラブル」の中でも

きちんと描かれている

それに、フランス革命の後に恐怖政治が続いたことも

かなり有名な話で

「ベルサイユのばら」で革命派のオスカルを描き

大ヒットを飛ばした宝塚でさえ

恐怖政治を率いた革命家

ロベスピエールの転落と

死刑執行までの物語を作り

上演しているほどだ

おそらく、恐怖政治まで含めて

フランス革命を全肯定する歴史家など

フランスの極右でも探さない限り

ちょっとお目にかかれないだろうと思う


自由を手に入れるには、命がけだった

それでも、世界に先駆けて、自由を求めた

世界に先駆けていたから、試行錯誤もあった

流さなくてもよい血まで、たくさん流した

それでも、自由を大切にしてきた

その、誇りのようなもの、犠牲に対する覚悟のようなもの

それを表すには、グロテスクなまでの血の表現は

どうしても、さけて通れなかったのだろう















それにしても、本当にマリー・アントワネットを収容した

コンシェルジュリ監獄が

今でもそのまま残っている、というのは

さすが、フランスの歴史と伝統の重み

純粋に、スゴイと思う


だが、つくづく

東京五輪で、こういうのが見たかった

独特な歴史と文化、旧文化と新文化の複雑なまじりあい

というなら

日本が一番ではないかと思う

それが、あの開会式を見たときには

本当に、恥ずかしかった

この国は、日本の文化はこんな程度だと

思っているのか、と思うと

なんとも、情けなくて

私のなけなしの愛国心が

みるみるうちに溶けて行った


最後に、ちょっとイヤミを言いたいのが

開会式の解説担当アナウンサーさん

もう少し勉強した方がいいと思う


というのも

ミュージカル・「レ・ミゼラブル」が写ったときに

話した解説が、全くのデタラメ

今はやりの言葉で言うと「嘘八百」だったからだ

「レ・ミゼラブル」の原作を読めとまでは言わないが

ミュージカルは、もう常識の範囲内だろう

舞台のDVD、CD、映画化もされ、ブルーレイまで出ている

お仕事のため

是非とも、一度見ておく方がいいと思う

特に、フランスの文化・歴史を題材にとる

オリンピックの開会式では

これに関連するショーが登場する可能性が高いことは

私にでも、予測できた

これを、ハッピーエンドの革命物語と紹介するとは

正直、上演権を持っている東宝から

怒鳴り込まれても、仕方がない立場だろうと思う


あと、コンシェルジュリ監獄が写ったときに

アナウンサーさんが一切解説が出来なかった

何の建物だか、わからなかったのも

かなり「残念」だった

ここは、日本のガイドブックにも載っている

かなり人気の高い観光名所だ

今回、選手のパレードがセーヌ川を船で下る、と聞けば

ノートㇽダム寺院と、コンシェルジュリ、パリ市警の脇を

通ることは、前からわかっているのだから

「地球の歩き方」でもパラパラと読んでおけば

良かったのに、と思う

この、「無解説」は、局としても

アナウンサー個人としても

赤っ恥の類のように思うのだ












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