2024年4月18日木曜日

嫌なことがあったときに、つぶやいてみるおすすめの一言

 中学の同窓会をやります

よろしかったら、いかがですか

という通知のハガキが来た

欠席に〇をつけて、返事を出してきたところだ


私はガンにもなったし、転職もしたが

私の人生の一番の暗黒時代をあげろと言われたら

間違いなく中学時代

次点が高校時代だ


もともと、集団生活には向かない性格だ

多くの人達とワイワイ騒ぐのは好きではないし

当時はやっていたアイドル達

聖子ちゃんや、明菜や、たのキントリオなどは

似たような顔をしている、という程度の

興味しか持てなかった

とはいえ

私の中学、特に私のクラスでは

人と違っている、あの人は変だ、と思われると

容赦なく、攻撃された

だが、ここから先が

暗黒時代の暗黒時代たるゆえんなのだが

担任の教師の影響もあり

これは、攻撃ではなく、指導である

良いことである

「非常識な友達に、常識を教えてあげ

 友達を教育しなおしてあげる」

友情と親切心の証、というのが

その言い分だった

そこで、私は

自分を隠し、一種の「擬態」をするため

全く興味のもてないアイドルや、スポーツの話題を

何かの宿題のように覚えて

周囲の顔色を見て、合わせていくことで

中学時代を乗り切った


不登校にはならなかったものの

……私が中学の頃にはまだ

  「不登校」「登校拒否」とう言葉すらなかった

  ただ単に、「サボリ」と言われたので

  学校を休む、という選択肢があることすら思いつかずに

  ひたすら歯を食いしばって通学したものだった……


好きなものが無かったわけではない

ドハマりにはまっていたのが

テレビでたまたま舞台中継を見た

平幹二朗主演の、「王女メディア」「NINAGAWA マクベス」

「タンゴ 冬の終わりに」「近松心中物語」

当時、華やかな文壇デビューを飾った

塩谷七生の描く、イタリア・ルネサンスのすさまじい謀略

チェーザレ・ボルジア、ニコロ・マキャベリ

ネットがなく、同じ趣味の仲間同士で

繋がることもできない時代に

これでは、お友達ができるばすもないと

今考えても、素直に納得する


今の自分の趣味の原形が

中学時代に、すでに出来上がっているのには

ちょっと苦笑したくもなるのだが

……特に舞台では

  主演の平幹二朗と演出の蜷川幸雄

  どちらも、亡くなってずいぶんたつものの

  いまだに、私の最大の「推し」だ

  ちなみに

  平幹二朗の息子の平岳大も俳優で

  今では、アメリカ在住

  日本よりもハリウッドで活躍しているようだが

  この人も好きだったりする……

これが人にバレたら

しつこくからかわれ続ける程度ならまだマシで

どんな「教育的指導」が入るかわからないので

ぼろを出さないように

学校ではなるべく、目立たないように

あまり、しゃべらないようにしていた

おかげで、班活動などは

非常に苦労をした


昼休みには、図書室に通い詰めた

1人になれるところなら、どこでもよかったが

いつしか、やはり昼休みには決まって

他の人が来ていることに気づいた


その人はいつも一人で

美術全集をめくって

絵を眺めていた

それが、恋愛感情とは全く別次元で

なんだか、いいな、と思った

実を言うと、時々、見とれたこともあった


その人も、私と同じ状況らしかった

ある時、何人かが妙なからかい方をしながら

その人にまといつくように、図書室にやってきた

何を言っていたのかは、もう忘れてしまったが

ギャアギャアとうるさかったことだけは覚えている

司書の先生に、静かにしろ、と怒鳴られて

その連中は帰って行ったが


私はすっかり驚いたこともあり

よほど、長い間、その人を見ていたのだろう

その人は、困ったようにふっと笑い

うるさくしたのを詫びるように

小さく私に会釈すると

「ユニークな人達でね」と

ぽつりと言った

それから

「珍しい体験をした」とつぶやいたが

今度は、私に話しかけたのか

独り言だったのかは、私にはいまだにわからずにいる


その人は学年も違ったらしく

その年の春からは見かけなくなった

名前も知らない人だが

私はいつの間にか、画集を見るのが好きになり

特に、その件があったときに、その人が棚から取り出した

ギュスターヴ・モローは

大好きな画家のひとりになった


モローという画家は

何とも、不思議な絵を描く

妖精と傍らにたたずむグリフォンだったり

サロメの前に突如現れたヨカナーンの首だったり

残虐な場面であるはずなのに

それが、少しの残虐性も感じさせず

時のとまったような

独特の、淡いベージュ色に包まれて

ただ静かに、存在している



そして

ちょっとカンに触ったり

神経を逆なでされるような人や、物事にあったときには

その人の言った

「ユニークな人でね」

「珍しい体験をした」を

舌先で、言葉を転ばすように小さくつぶやいてみる

すると、それだけで

あの時にタイムスリップしたような気がしてくる

ついさっき起きたはずの嫌なことに

確かに怒っていたはずなのに

まるで、モローの絵にからめとられたように

妙に現実感が無くなり

感情ごと、どこかに流れ去っていくような気分になる

腹立ちも、いつしか消えている


私は、これを「モロー・マジック」と名付けている

ここまでの効果は、私限定かもしれないが

多少の効き目はあるかもしれない

腹の立った時に、ぜひ一度お試しあれ

下の絵は、ギュスターヴ・モローの「オルフェウス」

こちらも、ご参考までに








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