2024年5月2日木曜日

子供に介護はさせない宣言

 職場の同年代の同僚に

よくいわれるのが

男の子の親は大変だな、というセリフだ

同僚のところは、娘さんが二人

それぞれ、結婚して別居しているそうだが

体が悪くなったら、面倒を見てほしいと

普段から言っており、娘さんたちも

心よく同意してくれているのだそうだ


女の子はこういうときに助かる

情が厚いから、というのが

同僚のお気に入りのセリフだ

こんなところで、ゴタつくのも面倒くさいので

なるほど、そうですか、うらやましいですね、とは

言ってはいるが

この話をされるたびに、私の頭に

どうしても浮かんでしまう物語がある

「リア王」である


かいつまんであらすじをまとめると

リア王には娘が三人

年老いて、国王を生前退位して

娘達と月替わりで同居することになるが

財産と権力を手放した父親に

娘たちは冷たく

リア王は、怒りのあまり半狂乱になり

嵐の荒野にさまよい出たあげく

ただ一人の、口下手だが誠実な娘に救われたものの

最後には、一家全滅となる、という

どこにも救いのない悲劇である


娘たちの冷酷さに苦しむリア王が

私はリアではないのか、というと

仕えていた忠実な道化が答えていう

名セリフ中の名セリフがある

リアの影法師さ


そして、こうもいう

賢くなる前に

年をとってはいけなかったのさ


私は、自分の介護を子供や嫁に期待するなら

その時点で、リア王のお仲間だと思っている

なぜなら

介護は、とてもじゃないが

素人が仕事や育児の片手間で

できるような仕事ではないからだ

私も、ごく短い間、父を家に引き取り

介護の真似事のようなことをした

父の希望は、自宅で最期を迎えることだった

病院から退院して、2週間で

父は旅立ちを迎えたが

それでも、夜中に起きて

寝返りを打たせたり、トイレの介助をしたりと

とてもではないが、翌日に出勤して

8時間の労働はできなかった

この間は、私は介護休暇を申請していた


私はたまたま、60になっていて

役職定年済み、仕事の分量も責任もかなり軽く

正直、いなくても困らない状況にあったので

介護休暇も取れた

だが、私が要介護になったとき

息子が同じ状況とは限らない

むしろ、働き盛りだったり

大きなプロジェクトにかかわっていたり

することもあるだろう

それを全部諦めて、自分の介護をしろ、というのは

私には、少々ワガママのように思える

親には親の人生があるように

子供にも、子供の人生があるのだ

子供の人生を妨げ

自分のためにすべてを捨てて尽くせ、と

平気で言えるとしたら

「毒親」であるように思えるのだ


同じことが、息子の嫁にも言える

むしろ、嫁は息子とは夫婦だが

私とは、血の一滴もつながっていない

赤の他人だ

介護を考えるなら、自分の親の介護をしたいだろう

しかも、私の場合

嫁はフルタイムで働いており

学歴は息子よりも上だ

到底、私の介護に呼びつける筋合いではない


それにそもそも、介護というのは

一見簡単に見えるが、きちんと講習をうけ

試験に合格して行う、プロの仕事だ

素人が見よう見まねでやっても

できることはできるだろうが

家庭の主婦の料理と、フレンチレストランのシェフの料理が

同じ料理でも、全然違うように

介護するほうにも、されるほうにも

不満の残る状況になると思う


なので

私は、子供や嫁、家族には

私の介護はさせない

まず、介護が必要になる時期を

少しでも遅くするために

健康に注意した生活をおくり

介護が必要になったら

公的介護保険と、自費のヘルパーさんの派遣を頼んで

プロの手を借りて、生活していきたい


もちろん、そのためには資金も必要だ

できるだけ、無駄遣いを控え

その時のために、2000万を目標に

貯金にも励もうと思っている


ただ、それもこれもすべて

公的介護保険が、現状維持されること

改悪されないことが、大前提だ

もし、介護がカットされたら

今、ヘルパーさんたちに頼んでいる介護サービスを

受けられなくなるのだから

イヤでも、子供や孫の手を借りざるを得なくなる

つまり、公的介護の削減に賛成するということは

自分たちが、親や祖父母の介護をする、ということと


介護法案がこれ以上改悪されないことを

心から願っている






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