2025年1月4日土曜日

明日はウクライナのバレエ

 今日は、テクテクと

徒歩30分のところにある、セブンイレブンまで

出かけてきた

往復で一時間

ウォーキングにしても、少し遠い距離ではある

それを、わざわざ行ってきたのは

なんとしても、セブンイレブンまで行く用事があった

具体的には、予約していたチケットの発券が

セブンイレブンでしかできなかったからだ


予約していたチケットは

ウクライナ国立バレエ団の「ジゼル」

公演は、明日の昼過ぎだ

なんとしても、今日行かなくてはいけなかった


ウクライナの公演、と聞くと

音楽でも、バレエでも、

なんとしても、見に行かなくては、という気になる

これは、一つにはささやかな支援を

したいこともあるのだが

それよりも、ウクライナのバレエのレベルが

頭一つ飛びぬけていて

ズシンと心に響いてくるから、というのも

非常に大きい


……バレエは、ロシアのボリショイバレエが

  世界一だ、などと、さえずるような

  半可通もいないではないが

  ボリショイに限らず、ロシアのバレエは

  元気いっぱいに飛び回る代わりに

  音のとり方があまく

  露骨に言えば、音とはずれた技術ショーを

  やっているように、私には見える

  私に言わせれば、あれならフィギュアスケートや

  新体操で充分だと思う

  おまけに、この頃では、そのご自慢の技術も

  日本のKバレエカンパニーの方が

  どう見ても、上に違いない……


ウクライナ国立バレエ団の芸術監督は

京都出身の日本人、ということもあり

日本での公演には、積極的だ

日本からの義援金も、多く寄せられ

その資金を使って、フランスバレエの名作

「ジゼル」に新演出をつけたのが

今回の演目だ


この作品は、身分違いの恋と

その結果、貴族の男に騙されるような形になった

村娘ジゼルが、嘆きの余り死んでしまう

その後、ウイリーという一種の

化け物グループのルーキーとして転生し

夜、一人でいる男を祟り殺すようになるが

たまたま、ジゼルの死を悼んで

墓参りをしていた、貴族の恋人が

祟り殺されそうになると

裏切ったはずの男を、化け物仲間から守り切り

朝の鐘とともに、永遠の別れを告げる、という

いいのか悪いのか、よくわからないストーリーなのだが


今回は、このストーリーの特にラストを変えている、という

細かい伏線もあり、

人間の魂は、死にすら打ち勝つ、というのが

テーマになっている、とのこと

期待度マックスでチケットを予約した


おまけに、今回ジゼルを踊るのが

アリョーナ・コジョカルだというので

私は、飛び上がって喜んでいた


この、コジョカルとウクライナ国立バレエ団は

かなりの確執があった

コジョカルは、昔

このバレエ団のプリマ、

つまり、どんな演目をやろうと

必ず主役になるという地位にいたのだが

「このバレエ団は

 伝統重視といえば、聞こえはいいけれど

 毎回毎回、同じことばかりで進歩がない」と

タンカを切って、バレエ団を飛び出した

飛び出したはいいが、再就職するバレエ団は決まっておらず

イギリスにあるバレエ団に

なんと、コールドで入団した

……コールドというのは、「その他大勢」のことである

  白鳥の湖でいえば、白鳥ズや、

  宮廷の舞踏会の場面で、バックで踊る

  名もない貴婦人役、などである……

もちろん、ウクライナ国立バレエのプリマの実力なので

すぐに、イギリスのバレエ団でもプリマに昇格したが……


数10年ぶりの、コジョカルとウクライナ国立バレエの

共演である

おまけに、コジョカルの踊る、というよりも

演じる「ジゼル」は

知的で、奥ゆかしくて、清潔で、可憐で

「守ってあげたい」けなげ系女子の典型で

なんとも、眼福なのだ


新年早々、縁起がいい、と思っていたら

公演を主催している、香蘭社から

メールが来ていた


コジョカルが、けがで出演することができません

そう、書かれていた

ついでに

これによるチケットの払い戻しは致しません、と

無情な言葉が続いていた


コジョカル以上のジゼルはいない

チケット代は払ってしまったから

見にはいくか、と、しょんぼりしながら

念のため、代役は?と

あまり興味なく、メールの続きを読んだところ

「代役は菅井円加(ハンブルグバレエ・プリンシパル)


飛び上がった

菅井円加サンといえば、日本を代表する

というよりは、今では世界を代表するバレリーナだ

数年前、ローザンヌ国際コンクールで

優勝されたのを、覚えている方も多いと思う

回転やジャンプは、男性顔負けのレベル

それでいて、踊りというよりも、演じている

という感じで

見ていて、セリフが聞こえてきそうなほど

表現力があり、情感が豊かだ


情念を躍らせたら、右に出るものはない

ハンブルグ・バレエ団で

トップバレリーナとして君臨している日本人女性だ

コジョカルは大好きなバレリーナだが

菅井円加サンは、日本公演のチケットを

取ろうとしても、かなり難しいバレリーナだ

良く、1日限りの代役に立ってくれたものだと思う


この偶然を大切に

心を込めて、一心に

舞台を鑑賞させていただこうと思う


随分と誉め言葉を並べたが

論より証拠

菅井円加サンの踊りがどれほど素晴らしいか

You Tube の動画を貼っておくので

興味のある方は、ぜひご覧いただきたい

特に

6分8秒あたりからのジャンプと回転

6分41秒あたりからの回転が

表現する言葉が見当たらないほど、素晴らしい

強いて言うとすれば「眼福」しかないだろう




2025年1月3日金曜日

新年の初買いはドンキホーテのハンドクリーム

 今日は1月3日

私の近所では、スーパーと花屋以外は

一度に、全部、初荷が始まる

実に、華やかな日だ

一日と二日だけは、書店とコンビニしか

開いていないので

駅前の目抜き通りにも

ほとんど人が歩いていないという

絶好の散歩ルートになっていたが

今日は、家族連れや、中高生らしい一団が

一度に繰り出してきたようだった


せっかくなので

何か、今年のご祝儀を兼ねて

無くても困るというわけではないが

あれば楽しい「賑やかし」になりそうな品を

一つ二つ、買ってみようかと思った


インフルエンザとコロナが怖いので

丁寧にマスクをしてはいるが

やはり、あまりに人がたくさんいる場所は避けたい

電車に乗って、渋谷、新宿、というのは

避けた方がいいだろう

やはりここは、あまり調子に乗らず

片道、小一時間をかけて

散歩とウォーキングを兼ねた速足で

電車で二駅分先にある

激安の殿堂、ドンキホーテの

初売りに出かけることにした


まず、福袋から見て回る

だが、正直、少々期待外れだった

食品類は、売り切れてしまっているものが多く

売れていないものは

家電や食器が中心で

あまり、ほしいものがなかったからだ


この年になってくると

家電類や食器類には

かなり注文がうるさくなってくる

家電は、一人暮らしなので、小さくて

その分、軽いものが欲しい

テレビや、レンジ類は、まだ買い替える予定がないので

福袋です、安いです、と言われても、

やはり、ピンとこない

食器は、今あるものだけで充分だ


だが、せっかく電車で二駅分も歩いてきたのだ

何か、自分用のお土産になりそうな

気の利いたものはないかな、と思っていて

ふと、思い当たった


年末のお節づくりで

ゴボウだ、レンコンだ、薩摩芋だと、

せっせと根菜類の皮をむき、水にさらして

野菜のあくと、徹底的にお付き合いしたせいか

かなり、手がガサガサになっている

四日を過ぎて、毎日の皿洗い、なべ磨きなどを始めたら

ヒビか、あかぎれができそうだ

そうだ

今日は、ハンドクリームを買って帰ろう

普段は、薬局でニベアの薬用を愛用しているが

この際だから、めったに買わないような

高級ハンドクリームにしてみよう、と思った


実は、これにもささやかなわけがある

「羊たちの沈黙」で有名なレクター博士というキャラクターがいる

この方は、もともとは東欧の貴族のご子息だったのだが

母国に戦乱が起き、国中が飢餓に苦しむようになる

両親を失い、妹と逃げている間に

妹が「悪い奴」につかまり

おそらくは、食べられてしまった、という事件が起き

それがきっかけで、レクター博士自身も

人を殺して食べる、という

なかなかの性癖を持つにいたるのだが

……ちなみに、このあたりの情報は

  「羊たちの沈黙」ではなく

   その続編「ハンニバル」の原作で書かれている

   原作には出ているものの

   映画化されたときには、完全カットになっているエピソードなので

   知っていると、ちょっと自慢できるかもしれない……


その、レクター博士が

名前を隠して、イタリアに住んでいるときに

アロマショップで、ハンドクリームを買うシーンが出てくる

レクター博士の趣味の良さと、博識さに

店員たちが全員、一目置いて

尊敬のまなざしを注いでいる、という

印象的なシーンだったので

ちょっとばかり、マネをしたくなったのだ


だが、ハンドクリームの売り場が

なかなか見つからない

店員さんを探して、聞いてみると

なんと、ハンドクリーム売り場はないのだそうだ

その代わりに

「化粧品と一緒においてあります

 ただ、化粧品がブランドごとになってるんで

 ハンドクリームも、各ブランドを見て

 いただくことになるんですが」


化粧品、である

口紅やら、アイシャドーやらの間を

うろうろと、ハンドクリームを探し回る

……考えただけでも、あまりに恥ずかしかった……


それでも、とにかく一つくらいは見つけようと思い

……今、家に帰ってから考えると

  そんなに恥ずかしかったのなら

  そもそも、ハンドクリームを買うのをあきらめて

  いつもの薬局で買うことにすればよかったあきらめて

  レクター博士がドン・キホーテで

  品物をあさるはずなどないのだし、と思うのだが

  その時は、とにかく、あまり化粧品売り場の奥深くにはいらず

  買えるハンドクリームを探すことしか

  思いつかなかった……


探したかいがあって

いいものを見つけられた

ちょうど、化粧品コーナーにはいる

ギリギリの角のところに

チューブ式のハンドクリームが、並べておいてあった

ヤギのミルクで、できているのだそうだ

そうそう、こういうのが欲しかった

少し珍しく、使うときに心ときめきがしそうなもの、と

手を伸ばしかけて、気が付いた


一番たくさん置いてあるのは

水色のチューブの、シンプルなゴートミルクのもの

その隣に、いくつか

実に愛らしい、ピンク色のチューブがあり

「甘いイチゴの香り」のラベルが張ってある

その隣には、最後の一本

淡い茶色で

「甘いチョコレートミルクの香り」と

ラベルが張ってある


迷った

実は、私は酒が飲めない分、極端な甘党で

特に、一番の好物はチョコレートだ

それに、カカオは肌にも良い、と

昔、ふしぎ発見か何かの番組で、聞いた覚えもある

ミルクチョコレートの香り、が、ほしいのだが


そもそも、この「ゴートミルク」のハンドクリームには

実に、愛らしい、というか

愛らしすぎて、初手からシニア層など

相手にしていませんよ、と言いたげな

チャーミングなヤギさんの絵がかいてある

それだけでも、相当に気恥ずかしいのに

堂々と、「甘いミルクチョコレートの香り」と書かれていては

恥ずかしさが大渋滞、というか

どこにも逃げ場がなくなってしまうくらい、気恥ずかしい


だが

しばらく迷った末に

どうせ、皆、忙しい日々を送っている

私のことなど、気にするようなヒマ人はいないはずだ

それに、買ってしまえばこっちのもの

誰にも見せるわけでもなし、

袋に入れて、家までもって帰るだけだ

そのうえ、最後のいっぽんではないか、と

自分を鼓舞して、手に取った

……そんな悲壮な覚悟をするようなことではなかろうに、と

  思ったのは、家に帰りついてからだった……


一番忙しそうなレジを選んで並んだ

レジ係の店員さんのぶっきらぼうさが

こんなにありがたかった日はなかった


皿洗いと、台所のふき掃除は済ませたが

ハンドクリームは、まだ使っていない

もしべたついて、パソコンのキーボードに

ついてしまったいやだから、ということもあるが

せっかく、大汗かいて買ってきた「お宝」なので

ふろ上がりに、ゆっくり、丁寧に使いたい、というのもある


とんだ独り相撲ではあったが

なかなか、楽しかった

それに

今夜は、ミルクチョコレートの香りに包まれて

ぐっすり眠れそうだ





2025年1月2日木曜日

孤独のグルメと人柱

 大みそかから今日まで

ほぼ毎日、多少なりとも見続けてしまっている

ドラマがある

テレビ東京の「孤独のグルメ」だ


最初、会社の同僚にすすめられて見たとき

感想は一言で言って

「なんじゃ、これは?」だった

うまく、まとめられないのだ


ストーリーは、ほとんど無いようなものだ

主人公「井の頭五郎」は初老の男性

この主人公が、一人で店に入り

頭の中で、あれこれコメントをつけながら

一人、食事を楽しむ

それだけの話だ


冒頭に、ほんの少し、仕事のシーンが入る

この部分は、完全にドラマで

相手も、役者サンが演じる

その後、主人公が食事をしに行く店は

実際にあるもので、メニューも実在している

感想も、台本があるにはあるが

その場で、実際に食べてみて感じたことを

付け加えることも多いのだそうだ

「井の頭五郎」役の松重豊サンは

食べてすぐに、近くに止めてあるロケバスに乗りこみ

そこで、まだ忘れないうちに

感想のセリフをあてるのだそうだ


ドラマは、シーズン10くらいになっているらしい

年末、大みそかには必ず特番も作られる

今回は、能登編だったが

わざとらしい演出は、まったく使わず

まだ、崩れたままの建物の姿を見て

主人公、井の頭五郎が、思わず絶句する

そこまでに、とどめておき

それ以上の爪痕は、店主たちの語る言葉から

じんわりと、感じとれるように

実に、抑制のきいた作りになっていた


とても、よかったと思う


最初、松重サン自身が

「おじさんがただ食べてるだけのドラマなんて

 誰が見るんだ?」と

言っていたそうだが

今では、押しも押されもせぬ

テレビ東京の看板番組になっている


しかも、今月には映画も公開されるとのこと

映画を盛り上げるために

過去の作品も、再放送されている

それが、この年末年始の

怒涛の「孤独のグルメ」再放送ラッシュだ


内容が内容なので

かなり古いものでも、何の違和感もなく

楽しく見られる

むしろ、五郎の選んだメニューと

感想と

何よりも、美味しそうにドンドン食べる

その食べっぷりの良さが

とても気持ちがよい


松重サンが五郎役に抜擢された理由が

「いつも、ロケ弁を美味しそうに食べているから」

だというのも、

なるほどなぁ、と思わず納得してしまう


それにしても、ご本人も

まさか、ロケ弁を食べる姿で

ご自身の代表作になるような役が来るとは

思わなかったのではなかろうか

全く、世の中というのは

何がどう転ぶかわからないから

この、突拍子の中差が、本当に面白い


「孤独のグルメ」は

この独特の緩さ、ぬるさが好きで

見るともなしに、なんとなく見てしまっている

多分、これも

「好き」の一種なのだろうと思う


今年の年末のXのトレンドワードにも

「孤独のグルメ」が入っていた

その中に、実に愉快な投稿があった

「毎回、ドラマの最後に流れる

 ほぼ、ほぼ、人柱」という歌の意味が分かりません

 誰か、解説してください」というのだ


どういうことか、お分かりだろうか?


私は、10秒ほど、何が書いてあるのかわからず

わかった瞬間に、盛大に爆笑した

ドラマの最後には、ドラマのテーマソングがかかる

このテーマソングの歌詞は

主人公の名前

「五郎 五郎 井の頭(いのかしら)」

これの、繰り返しである

……ドラマもぬるいが

  テーマ曲の歌詞もまた、負けず劣らず、ぬるい

  というところだろうか……


この歌詞を、ききまちがえたのだ

よりによって

「ほぼ 人柱」に


だか、確かに

五郎、と、ほぼ、はよく似ているし

人柱、と「いのかしら」も似ている

私は、聞き間違えはしなかったが

確かに、そう聞けば、聞こえてくる、というよりも

この投稿を読んでからは

「ほぼ 人柱」としか、聞こえなくなってきて

新年早々、どうすればよいのか

明るい悩みに、取りつかれている


それにしても

完全に人柱ならわかるのだが

「ほぼ 人柱」というのはどういう状況なのだろう

それこそ

誰か、解説してください、と言いたくなってくる




2025年1月1日水曜日

正月用菓子・コレクション

 お読みいただいている皆様

謹賀新年

本年もよろしくお願いいたします


初日の出を見ようと思っていたはずなのに

目が覚めたのは、すでに八時過ぎ

しかも、愛猫の「ご飯くれ」のニャニャニャという

叫び声でたたき起こされるという

あまりうれしくない、初目覚めとなったが


ともあれ、角餅に澄まし汁

だしは、鶏肉では少し淡泊なので

豚コマを使って

小松菜と、かまぼこ

それに、少しばかりユズの皮を入れて

得意料理の雑煮を作り

昨日、重箱に詰めたばかりの、おせちを

少しずつ、全種類いただくと

かなり、ずっしりと腹にたまってくる


そのためか

12時になっても、あまり空腹にもならず

何か、軽く済ませようと思って、思いついた

まずは、果物、ミカンと、リンゴを四分の一

丁寧に入れた緑茶

そして、三が日用に買い込んだ、和菓子を一つ

そして、夕食を早めにすればいい


買い込んだ和菓子は、合計四個

左から、豆大福、今年の干支菓子(蛇である)

節分草(花)、そして、一番手前にある

大ぶりの、半円型の餅菓子が、「花びら餅」である







さて、どれからいくか

やはり、花びら餅だろう


子の花びら餅は、ぜひとも食べたかった

というのも

実は、昨年NHKでやっていた

ドラマ「大奥」で印象的に取り上げられており

その時に、強く印象に残っていたからだ


昨年は、大家ドラマが実に不作、というよりも

信じがたいほどに、下らない駄作で

三回も持たずに、見るのをやめてしまった

特に、美術・演出・時代考証は

集団でストでもしているとしか

思えない無茶苦茶ぶりだった

……これは、一つには主演があまりに

  大根だったこともあったそうだ

  なんと、時代劇の

  立つ、座る、という所作ができなかったため

  主演に合わせて、脇役も全員

  主君の周りを、家臣が棒立ちになつたまま

  ぺらぺらとしゃべり続ける、という

  絶対にありえない演技をせざるを得なくなったのだそうだ……


まるで、無残な大河ドラマの代わりのように

突如、登場したのが「大奥」だった

これは、同名のコミックの実写化で

簡単に内容をまとめると

男子のみがかかる奇病のせいで

男性の人口が極端に減ってしまい

女性が将軍・老中など

政治の中心につき

男性は、大奥に入り

将軍の子孫を残すことを

主な仕事にするようになった、という

男女逆転物のストーリーだ

これを、三代将軍家光から始まって

大政奉還、江戸城明け渡し

文明開化の世の、津田梅子の登場まで

続いていく、という

実に、壮大なドラマだった

一部では、「大奥が本物の大河」

とまで、言われていた作品だ


これが、見事だった

大奥の男たちが着飾って居並び

将軍が相手を指名する

「お鈴廊下」の美術の見事さ

脚本は、原作を読みこんだうえで

原作以上のアレンジを加えてくる

おまけに

「名演技の殴り合い」としか言いようのないほど

役者サンたちが、素晴らしかった


男女逆転しているので

もちろん、ジェンダーの問題もある

なかなか子供のできない

五代将軍・綱吉に対するプレッシャーと

その苦悩は、実にリアルで

雅子皇后の若い時に

宮内庁や、一部の自称「愛国者」が

かけ続けた、プレッシャーとハラスメントを

強く思い起こさせたほどだった


……この「大奥」が

  今日と明日、一挙放送される

  再放送だが、まだご覧になっていない方には

  ぜひとも、おすすめしたい

  名場面はたくさんあるが

  一つ選べと言われれば、私は平賀源内の

  発病から死に至るまでと

  その死を嘆く、同僚の慟哭のシーンをあげる

  ただ、時間帯が遅い

  始まるのが、午前二時くらいからだ

  二時に終わるのなら、リアルタイムで

  見たかもしれないが

  二時にスタート、朝の五時終了では

  ビデオで見るしか、仕方がないだろう……


その中で、花びら餅が出てくるのは

第14代将軍、徳川家茂と

京都から嫁いできた、和宮のエピソードだ

家茂は女性なので

公武合体のために嫁いでくる、和宮は

男性でなければならないはずだが

実際に嫁いできた和宮は、女性だった

それは、和宮に付き添ってきた母親が

和宮(男性)を溺愛するあまり

徳川に嫁ぐのは嫌だ、とグズる和宮(男性)を

秘密のうちに、出家させ

その姉を極秘のうちに、男装させ、和宮だと名乗らせて

送り込んできたためだった

この「和宮の替え玉」は

障害を持って生まれてきたため、親に愛されず

かなり屈折した性格になっていた

……和宮に障害があったというのは、史実だ

  替え玉説も、かなり昔からささやかれている

  その証拠として

  最初、和宮は「おすそが悪い」

  つまり、足がうまく動かない、言われていたのに

  実際に江戸についた和宮は、手に障害があった

  そして、和宮の嫁入り行列を描いた、当時の絵では

  嫁入り行列が、「狐の嫁入り」の姿で描かれているからだ……


この「大奥」の優れたところは

歴代の将軍が

性別こそは違うものの

性格は、史実に基づいて、正確に描かれていることだ

家光は、エキセントリックで不安定

吉宗は、豪快だが無神経で粗野

そして、家茂は、まるで、ゆで卵のような

つるんとしていて、どこにもひっかかりのない

申し分のない善人だ


将軍家を下に見て、心を開かない和宮一行に

家茂は、食べることが好きだろう、と見当をつけ

そこを突破口にしようとする

家茂が、カステラを持ってくると

……この辺、少し記憶があやふやだ

  間違っていたら、申し訳ない……

和宮は、ツンデレぶりを発揮して

こんな黄色、気色が悪い

都では、菓子といえば、花びら餅、と話す

 (だが、もらったカステラは食べる

  念のため)

花びら餅を知らない家茂に

ごんぼ(ゴボウのことである、念のため)を甘く炊いて

ぎゅうひで包んで、と説明しかけると

家茂が、ごんぼを甘く炊いて?と

目を輝かせる

漫画なら「じゅるり」と擬音が付きそうな勢いに

和宮が

「あんた、甘いもんは好きか」ときき

家茂が

「はい、とても」と答える


これが、二人の間の

友情、というには、あまりに親密な

「シスターフッド」とでもいうべき、絆の始まりだった


それ以来、「花びら餅」には

強い、あこがれを抱いている

もともと、宮中で食べていた菓子が

京都の「下々のもの」にも広まり

宮中に倣って、食べるようになったものなのだそうだ

ゴボウは、若鮎にみたてた縁起物

薄く伸ばした、円形の餅に

柏餅の味噌あんに使うような

同じく、円形に伸ばした、ピンク色の牛肥をのせ

さらに、その上に

柏餅の味噌案に使うような

甘い、白あんを乗せ

最後に、中央にゴボウを乗せて

ゴボウのところで、半分に折りたたむ


素朴なようでいて、シンプルな分だけ

ごまかしがきかない菓子だと思う

私の近所の和菓子屋にはおいておらず

電車で15分のショッピングモールに

入っている和菓子屋まで、年末に買いに行ってきた


今日はこれから

飛び切り、美味しい緑茶を入れて

花びら餅と

ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを聴きながら

新年を祝おうと

とても楽しみにしている


ニューイヤーコンサートの

ワルツやポルカを聞いて

学友協会ホールの、金色の装飾と

ふんだんに飾られた花飾りを眺め

「ラデツキー行進曲」に手拍子を打たなくては

年が明けない

今年からは

これに「花びら餅を食べないと」という条件が

一つ、加わりそうな気がする


くどいようだが

今晩と、明日の晩の「大奥」

おすすめだ

まだ見ていない方は

騙されたと思って

どの話でもよいので、一話だけでも

ご覧になることをお勧めしたい

後悔は、しないと思う