2025年1月3日金曜日

新年の初買いはドンキホーテのハンドクリーム

 今日は1月3日

私の近所では、スーパーと花屋以外は

一度に、全部、初荷が始まる

実に、華やかな日だ

一日と二日だけは、書店とコンビニしか

開いていないので

駅前の目抜き通りにも

ほとんど人が歩いていないという

絶好の散歩ルートになっていたが

今日は、家族連れや、中高生らしい一団が

一度に繰り出してきたようだった


せっかくなので

何か、今年のご祝儀を兼ねて

無くても困るというわけではないが

あれば楽しい「賑やかし」になりそうな品を

一つ二つ、買ってみようかと思った


インフルエンザとコロナが怖いので

丁寧にマスクをしてはいるが

やはり、あまりに人がたくさんいる場所は避けたい

電車に乗って、渋谷、新宿、というのは

避けた方がいいだろう

やはりここは、あまり調子に乗らず

片道、小一時間をかけて

散歩とウォーキングを兼ねた速足で

電車で二駅分先にある

激安の殿堂、ドンキホーテの

初売りに出かけることにした


まず、福袋から見て回る

だが、正直、少々期待外れだった

食品類は、売り切れてしまっているものが多く

売れていないものは

家電や食器が中心で

あまり、ほしいものがなかったからだ


この年になってくると

家電類や食器類には

かなり注文がうるさくなってくる

家電は、一人暮らしなので、小さくて

その分、軽いものが欲しい

テレビや、レンジ類は、まだ買い替える予定がないので

福袋です、安いです、と言われても、

やはり、ピンとこない

食器は、今あるものだけで充分だ


だが、せっかく電車で二駅分も歩いてきたのだ

何か、自分用のお土産になりそうな

気の利いたものはないかな、と思っていて

ふと、思い当たった


年末のお節づくりで

ゴボウだ、レンコンだ、薩摩芋だと、

せっせと根菜類の皮をむき、水にさらして

野菜のあくと、徹底的にお付き合いしたせいか

かなり、手がガサガサになっている

四日を過ぎて、毎日の皿洗い、なべ磨きなどを始めたら

ヒビか、あかぎれができそうだ

そうだ

今日は、ハンドクリームを買って帰ろう

普段は、薬局でニベアの薬用を愛用しているが

この際だから、めったに買わないような

高級ハンドクリームにしてみよう、と思った


実は、これにもささやかなわけがある

「羊たちの沈黙」で有名なレクター博士というキャラクターがいる

この方は、もともとは東欧の貴族のご子息だったのだが

母国に戦乱が起き、国中が飢餓に苦しむようになる

両親を失い、妹と逃げている間に

妹が「悪い奴」につかまり

おそらくは、食べられてしまった、という事件が起き

それがきっかけで、レクター博士自身も

人を殺して食べる、という

なかなかの性癖を持つにいたるのだが

……ちなみに、このあたりの情報は

  「羊たちの沈黙」ではなく

   その続編「ハンニバル」の原作で書かれている

   原作には出ているものの

   映画化されたときには、完全カットになっているエピソードなので

   知っていると、ちょっと自慢できるかもしれない……


その、レクター博士が

名前を隠して、イタリアに住んでいるときに

アロマショップで、ハンドクリームを買うシーンが出てくる

レクター博士の趣味の良さと、博識さに

店員たちが全員、一目置いて

尊敬のまなざしを注いでいる、という

印象的なシーンだったので

ちょっとばかり、マネをしたくなったのだ


だが、ハンドクリームの売り場が

なかなか見つからない

店員さんを探して、聞いてみると

なんと、ハンドクリーム売り場はないのだそうだ

その代わりに

「化粧品と一緒においてあります

 ただ、化粧品がブランドごとになってるんで

 ハンドクリームも、各ブランドを見て

 いただくことになるんですが」


化粧品、である

口紅やら、アイシャドーやらの間を

うろうろと、ハンドクリームを探し回る

……考えただけでも、あまりに恥ずかしかった……


それでも、とにかく一つくらいは見つけようと思い

……今、家に帰ってから考えると

  そんなに恥ずかしかったのなら

  そもそも、ハンドクリームを買うのをあきらめて

  いつもの薬局で買うことにすればよかったあきらめて

  レクター博士がドン・キホーテで

  品物をあさるはずなどないのだし、と思うのだが

  その時は、とにかく、あまり化粧品売り場の奥深くにはいらず

  買えるハンドクリームを探すことしか

  思いつかなかった……


探したかいがあって

いいものを見つけられた

ちょうど、化粧品コーナーにはいる

ギリギリの角のところに

チューブ式のハンドクリームが、並べておいてあった

ヤギのミルクで、できているのだそうだ

そうそう、こういうのが欲しかった

少し珍しく、使うときに心ときめきがしそうなもの、と

手を伸ばしかけて、気が付いた


一番たくさん置いてあるのは

水色のチューブの、シンプルなゴートミルクのもの

その隣に、いくつか

実に愛らしい、ピンク色のチューブがあり

「甘いイチゴの香り」のラベルが張ってある

その隣には、最後の一本

淡い茶色で

「甘いチョコレートミルクの香り」と

ラベルが張ってある


迷った

実は、私は酒が飲めない分、極端な甘党で

特に、一番の好物はチョコレートだ

それに、カカオは肌にも良い、と

昔、ふしぎ発見か何かの番組で、聞いた覚えもある

ミルクチョコレートの香り、が、ほしいのだが


そもそも、この「ゴートミルク」のハンドクリームには

実に、愛らしい、というか

愛らしすぎて、初手からシニア層など

相手にしていませんよ、と言いたげな

チャーミングなヤギさんの絵がかいてある

それだけでも、相当に気恥ずかしいのに

堂々と、「甘いミルクチョコレートの香り」と書かれていては

恥ずかしさが大渋滞、というか

どこにも逃げ場がなくなってしまうくらい、気恥ずかしい


だが

しばらく迷った末に

どうせ、皆、忙しい日々を送っている

私のことなど、気にするようなヒマ人はいないはずだ

それに、買ってしまえばこっちのもの

誰にも見せるわけでもなし、

袋に入れて、家までもって帰るだけだ

そのうえ、最後のいっぽんではないか、と

自分を鼓舞して、手に取った

……そんな悲壮な覚悟をするようなことではなかろうに、と

  思ったのは、家に帰りついてからだった……


一番忙しそうなレジを選んで並んだ

レジ係の店員さんのぶっきらぼうさが

こんなにありがたかった日はなかった


皿洗いと、台所のふき掃除は済ませたが

ハンドクリームは、まだ使っていない

もしべたついて、パソコンのキーボードに

ついてしまったいやだから、ということもあるが

せっかく、大汗かいて買ってきた「お宝」なので

ふろ上がりに、ゆっくり、丁寧に使いたい、というのもある


とんだ独り相撲ではあったが

なかなか、楽しかった

それに

今夜は、ミルクチョコレートの香りに包まれて

ぐっすり眠れそうだ





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