2025年1月15日水曜日

第2話で脱帽!!・大河ドラマ「べらぼう」は見落とすと大損!!

 今年の大河ドラマは

江戸中期、主人公は写楽や歌麿を見出し

浮世絵を作り出した江戸のメディア王

と、ここまではいいけれど

生まれも育ちも吉原で

遊女たちの生活向上のため

女郎屋の主人たちに歯向かって

巨大な桶を伏せた中に

閉じ込められるリンチを受ける、というのが

大まかな第1回のあらすじ


となると

今年は、果たして

当たりか、外れか

見続けるか、止めるか

とりあえず、2月いっぱいくらいまで見ないと

判断はつかないだろう、と思っていたが


第2話を見て、あっけなく陥落した

これは間違いなく、大傑作だ

見落とすと、大損をすることになると思う


この「べらぼう」に関しては

かなり、突き上げが強いと聞いた

遊郭を美化している、だの

そもそも、吉原をドラマ化するなど、恥知らずだ、だの

女性差別だから、放送を打ち切れ、だの

ちょっと、ヒステリックなものまであるようだ


私は、別に吉原遊郭だろうと

品川宿だろうと

どこを舞台にしようと、構わないだろうと思う

ポイントは、そこを舞台として、何を見せるか、という

ドラマや物語の内容だろう


もし遊郭を舞台にしたドラマが

不謹慎だから許せない、となると

現代の落語でいえば、品川心中や、お見立て

お直し、紺谷高尾、明け烏

人によっては、ちはやぶる、もアウトだと言うだろう

歌舞伎では、ぶっちぎりで有名な、市川家の宝

「助六」が上演禁止

もっと悲惨なのが、「曽根崎心中」「冥途の飛脚」を

はじめとして

近松門左衛門がすべて上演禁止になってしまう

こうなると、完全にヒステリックな

日本文化の破壊だ


それに、ドラマの中では

吉原遊郭の遊女は、かなりの格差社会であり

下の方の遊女は、ほとんど餓死に近い状態

死ねば、投げ込み寺に放り込まれ

埋葬前に、ご遺体から衣服をはぎ取り

売るのが通例、という

かなり悲惨なところまで描かれていた

決して、美化はしていないと思う


それに、私は何より

「べらぼう」という作品の

脚本家とNHKのスタッフに

かなりの信頼を置いている


脚本家の森下サンは、男女逆転版の「大奥」

それに、二十年ほど前の作品になるだろうか

「JIN-仁ー」の脚本を書いている

この「JIN-仁ー」というドラマは

簡単に言うと、現代の医師が江戸時代に

タイムスリップして

多くのケガや病気と闘うヒューマンな物語で

その中の、大きなエピソードに

遊郭の女郎達が、知らずに感染し

最後には、脳にまで回って死んでいく

梅毒を根絶するため

カビからペニシリンを作る、というものがある

非常に感動的なストーリーになっており

その脚本を書いた、つまり

一般人の我々よりは、ずっと深いレベルで

遊女たちの悲惨な境遇を知っている脚本家に

吉原を美化するな、などと

まさに、「釈迦に説法」の典型例だろう

さて、それでも

第一回では、やはり、引っ掛かりが残った

主人公、蔦屋重三郎は

寂れかけた吉原をなんとか盛り返そうと

そこ抜けのバイタリティーを発揮して

あちこちを飛び回るのだが

見ている方としては、吉原という場所が場所だけに

どうしても

そこまでして盛り上げなくてはいけない場所か?と

どこか、話に乗り切れないところがあった


だが、第二話になってくると

話がもっと、ピンポイントになってくる

主人公、蔦屋重三郎は

吉原のガイドブックを作るために

当代随一のコピーライター、平賀源内を探し

ガイドブックの序文を書いてもらうことを思いつく

そのための、ドタバタ話、に

ぎゅっと、焦点が合わされてくる


なので

見ているこちらも、ピンポイントで

早く平賀源内を探せ、とか

源内の出してくる難問を

どうクリアーするか、という

話の方に、意識が向いていく


しかも

この「難問」がよかった

平賀源内は、有名な男色家で、男一筋

……江戸中にカミングアウト済みである

  ちなみに、これは史実だったりする……

その源内に、女色の吉原のガイドブックの序文を

書いてもらうには

源内すら、夢幻に誘う魅力が

吉原あれば、いまくいくのだが

もしなければ、そこでおしまい、というのが

第二話の中心となってくる

「夢・幻」に誘うにはどうするか

天女のような、人間離れした美女?

それとも、源内好みの男が花魁のコスプレをする?


この解決編が、また、見事だった

主人公、重三郎の、幼馴染の花魁、花の井は

源内が会いたがっているのは

どんな美女でもなく

亡き恋人、歌舞伎役者の「瀬川」であることに気づき

役者姿に男装して現れる

そして、自分は男でもなく、女でもなく

幻の「瀬川」と名乗る

源内は、その「花魁・瀬川」に

昔の恋人であった

「役者・瀬川」の舞の稽古を見るのが好きだった

と語り、舞を所望する

源内は

踊る「花の井・瀬川」と二重写しになるように

「恋人・瀬川」の姿を思い浮かべる


これが、吉原が

源内に見せた「夢・幻」

このような、厚みと懐の深さが、

さすが、吉原と言われる魅力

これに納得した源内は

序文を書いてくれる

その序文は、私が説明するより

NHKの動画を貼っておく

夢を楽しんだうえで、夢は夢でしかないことを

十分に理解して

吉原を立ち去る

源内の、笑顔の奥にわずかに苦みや憂いを帯びた

表情が、実にいい

https://x.com/i/status/1878406074715496962


というストーリーなのだが

源内を演じた、安田顕サンの演技が

とても良かった

「瀬川」の踊りを見ながら、微笑む、その微笑のまま

目の中に、少しずつ涙がたまっていく

ひょうひょうとして洒脱な、粋人でありながら

愛情深い繊細さを感じられた








平賀源内一人で、ここまでの脚本になるのなら

今後出てくる、写楽や、歌麿

ラスボスともいうべき、松平定信の

寛政の改革との対立は、どうなるのだろうか

今から、ワクワクが止まらなくなってきた


改めて、断言したい

この「べらぼう」は

間違いなく、大傑作になる



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