上野の国立科学博物館、略称「科博」が
出している雑誌に、「milsil」(見る、知る、ということらしい)
というものがある
バックナンバーも売っているので
「ネコを科学する」という特集に惹かれて
初めて一冊買ってみた
科学雑誌など、子供の頃の「科学と学習」以来で
難しくないだろうか、と少しばかり
おっかなびっくりで読んでみたところ
これが、非常に面白い
ネコもイヌも、原種のオオカミやヤマネコが
好奇心で人間に近づき
共生生活に入ったものではあるが
イヌは、忠実さと有用さを武器にしたのに対して
ネコは「かわいさ」を武器に人間に取り入った
ネコは顔のパーツが下に寄っていて
目が大きく、口元が小さい
これは、幼児などと共通した特徴であり
人間は、こういう顔付を見ると
「かわいい」と思うようにプログラムされている
ネコは、それを十分に利用している
実は、猫のニャーン、という愛らしい泣き声
これも、猫同士では使われない
人間をオトす手段の一つではないか、と
考えることもできる、とのことだ
ネコ好きの私としては、なるほど、と
膝を打ちたくなるような内容で
すっかりうれしくなって読み進めていくと
「ネコは自分の名前を認識しているか」という記事が載っていた
実験方法まで紹介されている
記事の結果は、たいていのネコは自分の名前は分かっているが
時には、よく聞くほかの言葉を
自分の名前だと誤解している子もいる、とのことだった
実験方法が詳しく載っていたので
早速、我が愛猫にも試してみた
やりかたは、意外に単純で
同音でよく似た抑揚の
ダミーで四回呼んでみる
五回目に、ネコの本当の名前で呼んでみて
反応が明らかに違えば
名前を認識していると判断できる、とのことだ
我が愛猫の名前は「のえる」という
私が用意した4個のダミーの名前は
「たべる」「のめる」「ねてる」「こえる」
そして、最後に「のえる」と呼んでみた
……無反応だ……
ということは、我が愛猫は自分の名前が
わかっていないのだろうか
そんなわけはあるか、と何セットも繰り返してみたが
やはり無反応だ
とはいえ
買主としては、この結論は認めがたい
何か、別の言葉、と考えていて、ふと思いついた
時折、こらネコ、おいネコ、ネコネコネコネコ、などと
「ネコ」を連発していることがある
きっと、我が愛猫、のえるは
自分の名前を「ネコ」だと思っているのだ
実験してみた
ダミーの名前4個
「カコ」「マコ」「キコ」「タコ」
……何か、妙なご一家のことを思い出した方が
おられるかもしれないが、単なる偶然の一致である
あのご一家が「タコ」だと言っているわけではないので
深読みをなさらないよう……
結果は
無反応だった
我が愛猫は、自分の名前も、愛称もわからない
そうは思いたくはないが
実験結果は「駄ネコ」と示している、と言いかけて
ふと思いついた
我が愛猫のえるを見るたび、触れるたびに
必ず言っている一言
「かわいい」
まさか、とは思うが
チャレンジはしてみようと思った
ダミーの言葉は
「悲しい」「賢い」「か弱い」「怪力」
そして、5番目に
「かわいい」
と言ったとたん
愛猫が振り向いた
ふにゅん、と鼻声で返事をしただけではなく
「熱いんだけど、何の用」とでも言いたげに
ゆっくり、のっそり起き上がって
もそもそと私の方に近づいてきた
間違いない
我が愛猫は、自分の名前を
「かわいい」だと思っている、と
科学的に証明のできた1日だった
買主としては、ほんの少し引っ掛かるところが
無いわけではないが
本当に可愛いのだから
まあ、いいか、と思っている