今朝、休日明けで
なんだか少し良い気分で出勤したら
何やら、給湯室に数人が集まって
深刻そうに話している
そのうちの一人は、車いすユーザーだ
私の職場は、かなりバリアフリーが進んでいて
車いすユーザーに限らす、障かい者は何人かいる
みな、ごく普通に社員として働いており
希望すること、やってほしくないこと
職場として対応できること、できないことなど
ある程度、ざっくばらんに、言い合えている
若い子のガールズトークかと
思っていたら、ふいに呼び止められた
車いすユーザーの同僚がひどく憤慨しており
これ、ひどいと思いません、と
急に、スマホの画面を差し出された
読んでみて、ああ、あれか、と思い当たった
車いすユーザーと映画館の間で
何かトラブルになったらしい、というのは
テレビのニュース番組でちらりと見てはいた
ひどく雑なまとめ方をしていたので
興味も持てず、流していたのだが
車いすユーザーの同僚が怒っていたのは
映画館に対してではなく
クレームをつけた、車いすユーザーに対してだった
車いすを使っている人が全部、こういう人ばかりだと思われる
誤解されたら悔しい、と、かなりの怒りぶりだ
若い方の使うスマホの文字は、私には少し小さくて
読みづらいのだが、頑張って読んでみた
なるほど、これは同僚が怒るのももっともだ、と思った
もともと、映画館とトラブルになった人は
迷惑系ユーチューバーらしく
新幹線の中で、猫をケージから出して
動画を撮影し、アップしたりしていた
(私は猫好きだが
さすがにこれはどうかと思う)
目下、大騒ぎになっているのは
この人は、事前連絡せずに映画館に行き
車いす席があるにもかかわらず
別の席に座りたいから、と
映画館の職員に、車いすごと抱えて階段を上らせ
自分の体を持ち上げてシートに移動させた
見終わった後で
映画館の支配人から、うちの映画館では人手が足りないので、と
今後の対応を断れらたら
社長と話をさせろ、支配人も謝罪文を出せ、と要求していた
私が呼び止められたのも、納得がいった
私は数年前に、自転車にはねられて骨盤を複雑骨折し
しばらく、車いすを使っていた
その後、歩けるようになってしばらくして
父親の介護がはじまり、今度は車いすを使って
介助する立場になった
おそらく、この職場の健常者の中では
車いすの知識も、経験も、私が一番豊富だからだろう
どう思います、と聞かれたので
車いすの扱い、介助の仕方、映画館の知識
労働基準法
全てについて、余りに無知だ、と答えた
車いすは、持ち上げるようには設計されていない
なので、持ち手がどこにもない
しかも、車いすごとに構造は千差万別だ
素人が見て、一番持ちやすそうだと思うのは
車いすの手すり部分だが
私の使っていたものは、手すり部分は着脱式で
力をこめたら、すぐに外れるタイプだった
これを持ち上げられたら、とても不安定だろうし
車いすには安全ベルトはないので
最悪、落ちる可能性もある
万一落ちたら、車いすに乗っているくらいだ、
体がうまく動かせない、つまり、受け身が取れないので
大事故につながる可能性がある
また、介助もかなり難しい
体を持ち上げて、車いすに乗せるのが
どれほど神経を使い、大変な作業か
一度でも、親の介護をしたことがある人は
心底同意してくれると思う
体に力が入っていな人を、支えるのはとても重い
ぶつけて怪我をさせてはいけないので、神経を使う
なおかつ、数センチの誤差で
車いすの据わる部分にぴったりと
体をおろし、座らせることの難しさ
自分がどんな体勢を取っていいのかわからないままやると
膝、肩、腰を同時に傷める
関節の可動域を知らずに、相手の体を動かすと
関節を外してしまう可能性もある
父の最晩年には、ヘルパーさんと訪問看護師さんとマッサージの方に
毎日訪問してもらっていたが
その時にも、一人で車いすからベッドへの移動は難しい、
無理をせず、専門家の手を借りてください、と
何度も言われた
簡単そうに見えるかもしれないが
介助の仕事というのは、本当に難しい
だからこそ、介助には資格がある
勉強をし、実習を重ね、試験に受かる
そうした「プロ」に安心して、自分の体をゆだね
プロの仕事には、正当な報酬を払う
これがスジだと、私は思っている
映画館は、車いす席を用意しているのに
そこを使わず、あえて別の席で見るというなら
介助者を頼んで、一緒に映画館に行き
車いすを押してもらい
座席移動も介助してもらうべきだろう、と思う
素人である、映画館のバイトさんに
薄暗い映画館の、細い階段で
車いすを持ち上げさせた上に
体に触れる介助をさせるなど
どう考えても、無茶な要求だろうと思う
無茶を要求し、断ると、上の人と話させろと騒ぐのを
モンスタークレーマーという
それに、私が引っ掛かっているのは
映画館のバイトスタッフのことだ
労働基準法を頂点とする労働環境に関する法律では
女性が持てる荷物の重さとして
最大20キログラムまで、と定めがある
車いすごと運ぶとしたら
載っている人の体重が30キロ台でなければ
法律違反となるはずだ
私の職場には、妊娠中の女性も何人かいる
当然ながら、職場全体で協力して
高いところのものは取らせないし
重いものは運ばせない
確率は高くはなくても、映画館のスタッフに
妊婦サンがいる可能性もゼロではない
そのあたりの配慮も、あって良いだろう
さらに、運んだのは女性二人だったというが
私としては、そのバイトさんたちが
どんな靴をはいていたのかも、心配になっている
介護施設では、全員がゴム底のスニーカーで
滑らないように、重いものを持っても
足首をひねらないように、安全に配慮している
だが、映画館のスタッフで、運動靴を履いている人は
掃除の人以外には見たことがない
パンプス履き、ハイヒール履きで
重い車いすを運ばされては
足を滑らせる危険、捻挫する危険もあり
非常に危なかったはずだ
それも含めて、せめて映画館には
事前連絡の電話一本くらいは
かけても良かっただろうと思っている
なので、私が車いすユーザーの同僚に答えたのは
どこをどう考えても
このクレームは不当だと思う
けれども
モンスタークレーマーは、健常者にもたくさんいる
たまたま、クレーマーの1人が
車いすユーザーだっただけで
これが車いす全体の偏見になるほど
世の中は単純でも、冷たくないと思う
少なくとも、この職場にいる人は
誰もそんなことを思っていないし
貴女をクレーマーだと思う人も
わがままだと思う人も一人もいない
だから、今まで通り、安心して職場に来て欲しい、と話した
若い子達は、あの子の好きなミルクティーを入れて
励ましてあげよう、と相談をしていた
元気になってくれるといいと思う
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